ソプラノ川上真澄のオペラな生活

ソプラノ歌手の日常を。

美しい音を生み出す筋肉

ソプラノ歌手・川上真澄です。

 

先日、息子がピアノを弾いていたんです。

ショパンノクターン

いつもにも無い愁いを感じる音。この子こんな音を出すようになったんだ…

 

息子は高校一年生。まだまだ色々あるお年頃。ちょうど学校で嫌なことがあって悩みを抱えていたんです。

 

しばらく聴き惚れていたら、いきなり鍵盤をバーン!!

と叩いて、音楽が止まってしまいました。素敵な演奏だったのに。

 

その瞬間、寝ていたうちのお犬様(ポメラニアン10才)むくっと起き上がってピアノの部屋の扉の前に行き、じっと佇んでいました。

 

大好きなお兄ちゃんに何かあったと心配したんでしょうね。微動だにせず扉をみつめていました。

 

あまりに健気な姿だったのでピアノの部屋にお犬様を投入。

息子は鍵盤の上に突っ伏してました(たぶん泣いてたんだと思う)

しばらくしたらお犬様はピアノの部屋から追い出されてました!!

 

それにしても…

今までにない、いい音だったんですよ。

色んな経験がいい演奏を生むんですね。目の当たりにしました。

 

簡単に『色んな経験がいい音を生む』なんて言いますが、結局は『息』なんじゃなかろうかと思うのです。

 

演奏は『息』で変わります。

『息』を使って演奏する楽器は言わずもがな、ですが、ピアノだって結局は『息』です。

『息』は感情で変わります。

そう言えば、お世話になった指揮の先生も『息』は自分の心って書く、大事なのは『息』だと仰ってました。

 

そして『息』を司る身体の器官は『横隔膜』です。

 

この前、ご年配の方を対象にヴォイトレをやった時に話したことなんですが、これは研究生時代に演劇の先生から教わったことの受け売りなんですけどね、

人間の身体で歳を取った人の方が美しいものは『横隔膜』なんだそう。

 

悲しいこと、楽しいこと、嬉しいこと、色んな感情の経験をする中で横隔膜に血液が通って美しい色になっていく。

 

先生に教わったのをそのまま伝えているので、医学的にホントかどうか知りませんが、息子のピアノを聞いていたら、あながち嘘ではないような気がしています。

 

そしてね、「悲しみ」を表現するとき、「楽しさ」を表現する時には、息を入れる場所を右とか左で使い分けるんだそう。確かに「悲しみ」を表現するところに息が入ると独りでに涙が出てくるんですよ。