ソプラノ川上真澄のオペラな生活

ソプラノ歌手の日常を。

仕事を受ける時

私たちの仕事って、口約束が多いです。

依頼してくるところは、公的な機関とか、プロでやってるところの依頼とか、先生や先輩からの依頼とか、アマチュアとか、素人さんとか、とにかく色々。

 

立ち話みたいな感じで「来てね」と言われて「暇だったら行くね」と答えてチラシに名前を書かれそうになったり…。こちらは未遂で済みましたが、出演料の出ない依頼だったので「遊びのお誘い」と同じこととして受け、遊びの返事と同じように「都合が合えばね」と答えておりました。

 

ある時、日本の年末でお馴染みの、ある曲目での演奏依頼がありました。

マチュアの楽器弾きの方からの依頼です。

けれども、その人が言ってるだけで、主催がどことか肝心のことが全く見えない。話があった時から“胡散臭い”感じではあったので警戒していました。

 

そうこうするうち「歌い手(各パート)集めてくれ」「謝礼金は○○円」「合唱指導もお願いしたい」「指揮は△△さんです」などと、具体的な事を言ってきたので、これは依頼かな?大丈夫みたいだな?と。

それでも、疑り深い私…

「では、その指揮者の方にご挨拶したいので、ご連絡先をお知らせ頂けますか?」とお願いしたら、

それは出来ない、というお返事。

 

ん?

どういうこと?

私が歌うって決まったんなら挨拶しとかないと…

 

そうしたら

「今度、その指揮者の演奏会があるので、ご挨拶に行きます」と。

「ならば私も行きます」とお答えして、数週間後、

 

「演奏している音源を出してください。オーディションします」

 

は?

 

後から分かったことですが、その人、暴走して一人で勝手に私に依頼してきてたんです。

 

しかも、各パート全員集めろと言ってきてたはずなのに、他の歌い手さんにも依頼しているということが判明。

それでは歌い手、余りますよ?

まさかアンダー?

オペラじゃないのに?

 

こちらは既に他の歌い手さんには依頼した後。

困りますよねぇ、こういうの。

私の信用問題にも関わります。

 

結局、音源は出さずに辞退しました。

お願いしていた歌い手さんたちは「出しますよ」と言ってくれてたんですが、あまりに失礼な話です。

 

主催がはっきりしない、主催がアマチュア、主催が素人さんの場合、大抵は指揮者がキャスティングを握っていると思います。

ソリストのレベルで演奏会のレベルが決まってしまうし、指揮者だって自分がやりやすい人と演奏した方が安心です。

 

なので指揮者にご挨拶をと申し出たんですが、それをさせなかったということは、自分も指揮者と会ったことがなかったからなのか、自分が好き勝手に依頼してるのがバレるのを恐れてのことなのか…

 

こういう時の依頼、最初から疑ってかかるのも失礼だし…

 

でも、考えてみたら依頼してきたその人、

私の歌を一度も聞いたことが無い

のです。

何度も何度もこちらの演奏会のご案内、入場無料のものも含めてお知らせしているのですが、未だに顔を見せたことがありません。

聞いたことないのに「演奏」と「合唱指導」までお願いしてくる…って。こちらがとんでもない演奏レベルだったら、どうしたんでしょうか。やはり疑ってかかる案件でしたね。

 

それでも聞かずに依頼ということは多々あるものです。そこは「文書でください」と言うべきだったか…

 

前に私たち夫婦が依頼した公演に

「文書で依頼してください」と言った人がおりました。

確かに、素人さん相手なら上記のようなこともありますから必要なんでしょうけど、

その人よりもキャリアの上の方々も受けてくださっている公演で、しかも初めてではなく3度目の出演依頼。それまでの公演では謝礼金もちゃんとお支払いしているし、なのに今さら文書?という思いがあって文書で依頼するのを忘れておりました。

 

で、キャスト発表したら「文書で依頼されてないのにキャスト発表されて困惑している」と連絡が来たので、それならばご縁が無かったということで、お引き取り頂いたことがありました。

初めてではなく、継続している公演での出来事。正直、信用されてなかったのかと逆にビックリ。

 

どちらのためにも、文書で依頼するのは必要なのかもなぁと思いつつ、メールや電話で依頼→(必要があれば)打ち合わせ→発表

という流れになってるので、このまま行くのかなぁ…