ソプラノ川上真澄のオペラな生活

ソプラノ歌手の日常を。

幽霊になりたかった

最近とみに子どもたちの成長が早いなぁと思います。

 

私の腕の中でスヤスヤと眠って、一生懸命おっぱい飲んで…

小さなお手て繋いでチョコチョコ歩いて、他愛もない歌を歌って…

 

そうした時間は戻らない、かけがえのない時だったのだけれど、

 

当時は、

時々、

 

永遠に続いて自分の時間は全く持てないまま、

歌い手になりたくてやってきたことは全部無駄だったのか、とか、

二度と舞台には戻れないのか、とか、

このまま朽ち果てていくのか、と恐怖がよぎってくることがあったんです。

 

それが顕著だったのは子どもを連れての何度目かのイタリア滞在で、どこかで古い大きなお屋敷を目にした時に

「私、ここの幽霊になってしまいたい」

本気でそう考える自分がいました。

今にして思うと、正常ではなかったんだと思います。

 

もちろん、夫婦二人で、周りにも助けられながら子育てしてますし、夫はかなり協力的で、よその方に羨ましがられるほど。

 

それでも、そういう不安を持ってしまったのは、どんどんオペラの仕事をしていく夫と違って、自分は家にこもったきり何も接点がない。

目の前の子どもとの生活でいっぱいいっぱいで、動けなくなってる自分がいる。

もっとも、その頃の私にオペラを、ヴィオレッタだのミミだの歌いきる力は無かったようにも思うし。そうなりたいのに、どうしようもできなくて。

 

市民オペラ団体を立ち上げて、曲がりなりにもそこで主演をやらせて頂くようになって、

今にして思えば、あれは杞憂だったということになるんだけど、

 

つらかったなぁ、と思う反面、

 

あの可愛かった子どもたちの、あの小さな幸せな時はもう戻ってこないんだなぁと。

 

もちろん、今でも子どもたちは可愛いし、仲がいいし、コミュニケーションとしては、かなりベタベタした親子関係だと思いますが、

次に自分の血の繋がる小さな子と接するのは、おそらく早くて10年後…

 

でも今が一番、幸せ。

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音楽の世界でも小さな子を抱えて、頑張ってらっしゃる方はたくさんいます。

私の世代より上の方では子どもを諦める人が多かったように思うけど、最近は出産、育児をする歌い手さんが増えました。

それでも私のように少なからず焦りを感じている人もいるかもしれません。

 

今、思うのは

「やりたいのに、できない」

ではなく、

どうしたら自分のやりたい活動(最終形)に繋がっていくのか、

それには、小さなことからコツコツと歩んでいくしかないのかなと。

 

上手に周りを巻き込んでいくことでしょうかね。

 

自分の願いを叶えるのは、自分。

不満でいっぱいのお顔には、ならないようにしたいです。