ソプラノ川上真澄のオペラな生活

ソプラノ歌手の日常を。

演奏したらいけない曲?

演奏したらいけないなんて、怖いタイトルですが…

 

公演プログラムを考える時、選曲には色々と悩みます。

自分が演奏可能な曲かどうか(実力、声の種類に合ってるか)

前回演奏してないか

演奏時間とのバランス

公演の趣旨

季節

編成(ピアノと一緒なのか、他の楽器もいるのか)

ジャスラック…笑

 

などなど、

ありとあらゆることを考えて選ぶわけです。

 

Stand Aloneという曲をご存じでしょうか。

司馬遼太郎歴史小説坂の上の雲』をNHKがドラマ化。その主題歌でした。

 

この曲を依頼を受けたコンサートのプログラムに組み込んだ時に他所から抗議がありました。

(何年も前のことで解決しております)

 

私にコンサートの依頼をしてきたのは『9条の会』

プログラムを組むにあたって、入れて欲しい曲や避けた方がいい曲はありますか?と尋ねておりましたが、自由にどうぞということで事前にこの曲を出して許可されていました。

チラシに演奏予定曲を載せ告知したところ、

 

他の国を侵略した様子を描いたドラマの主題歌を9条の会主催のコンサートで演奏するとは何事だ!!

と(某国の人から)強い抗議がありました。

選曲した時はそこまで考えておらず、そこを突っ込まれたかと…。歌詞はドラマと関係ないような感じです。

 

抗議は9条の会に直接あったので、私は知りませんでした。9条の会ではこのドラマのことも、曲も、もちろん分かっていて、この歌は戦争とは関係ないと判断されました。私には知らさないで対応していたそうなのですが…

 

何がなんでも取り下げさせたかったのでしょう。9条の会の回答に納得いかず私に直接抗議がありました。

 

そういうことなら辞めましょうか?とプログラムの変更を考えましたが、抗議の仕方があまりに卑劣で暴力に屈することになるので結局、演奏することに。

 

私に直接抗議してきた方は「私たちに配慮して山田耕作の作品も演奏しないでくださる方もいる」と。

 

どうやら某国の人にとっては、山田耕作さんもNGなんだとか。

 

歌のコンサートでは特にご年配の方が集まるコンサートでは、山田耕作さんは外せません。

声楽を勉強する人にとっては避けて通れない作曲家の一人です。

 

普段のコンサートではOKでしょうけど、この時は選曲の難しさを感じました。

さすがに『露営の歌』とか選びませんが(歌うことはないです笑)戦争に関係ある作曲家まで演奏してはいけないとなると、選択肢が狭まります。

先ほどの露営の歌を作曲した古関裕而さんとかヒットラーに利用されたワーグナーリヒャルト・シュトラウス、などなど…。作詞家もダメかもしれませんね。そうするとこの時代に生きた作詞家、作曲家の作品は全てNG。

 

演奏中に妨害があるかもと身構えておりましたが、結局、抗議をした方々はコンサートには現れず。

 

そういう曲をプログラムに入れてしまったのがそもそもの発端なんですが、どんな音楽でも奏でられる平和な世の中に、というのが9条の会の思いかと。

(さすがに「勝ってくるぞと勇ましく♪」なんてのはNGでしょうけど)

 

不快になってしまう人がいるのは音楽を戦争利用した人がいるからなんですね。(Stand Aloneは戦争利用されてないですが…)

 

抗議にしても戦争を仕掛けられたようで、争いが争いを生むというか、連鎖は断ち切る必要があります。ま、そもそもその曲を選ばなきゃ良かったんですが、そういう問題かなぁ???と。この曲、とても素敵な詩とメロディです。

 

 

なんでこんなことを思い出したのかというと、Stand Aloneの合唱譜をたまたま入手しまして。

他の楽譜を探していたら自動的に付いてきたんです。(楽譜って、ご縁がないと手元にはやって来ないのですよ)